2月(前半)

 二月は気分がいいので、二回書ける可能性にかけて前半と後半に分けてみた。後半は書かないかもしれない。

 

•親指の爪が割れた

 長く伸ばしていたから爪が割れた。かなり深めに割れた。爪が短くなったせいで、親指自体の長さがいつもの半分くらいなってしまったように感じる。親指の第一関節がないような感じ。

 

•メイク

 メイクが上手く行った時に限って人に会う予定がない。と思ったけど、人に会う予定が少なすぎるだけなのかもしれない。

 

•美容院

 徹夜で美容院に行った。前髪切られてる時、目が乾燥しすぎて過剰な瞬きをしてしまった。切った髪が目に入ったと思われ、顔をマジマジと見られたけど全然そんなことなかった。

 

•最近思い出したこと

 小学生の頃、三、四年生くらいまで学童に通っていた。学童には勉強する部屋と遊ぶ部屋があり、遊ぶ部屋では大抵ドッチボールが行われていた。みんなドッチボールばかりしていたので、ドッチボールが強い人は学童内で一目置かれていた。

 高学年になるほどドッチボールは強い傾向にあったが、中でも五年生のAくんは学童内最強と言っても過言ではないくらい強かった。私が一年生か二年生の頃、Aくんが五年生だったので、学年が離れていたこともあってか、私がAくんと接する機会はほとんどなかったが、それでも私はAくんのことを密かに尊敬していた。(ドッチボールが強かったから)

 高学年と低学年が接する機会はほとんどない。みんな基本的に同級生か、同じくらいの年齢の子としか遊ばないし、特に男の子はそういう傾向にあった。だから高学年の人と仲良くしている同級生はすごいなと思っていた。有名人と仲いいことをすごいと思うのと同じような感覚かもしれない。有力な人間と対等に付き合っていてすごいと思うような感覚。

 Aくんも例に漏れず、基本的には高学年の子供としか遊んでいなかった。低学年はドッチボールの相手にならないからかな、と当時は思っていた。

 しかし、いつの間にか、Aくんは私の同級生のMちゃんと仲良くなっていた。よく見かけた構図としては、MちゃんがAくんにワガママを言って、それをAくんが聞くという図。Mちゃんが「向こう行くよ」と言ってAくんを引っ張っていく場面をその頃よく見かけた。私はびっくりした。Mちゃんは私の同級生、つまりAくんにしてみれば圧倒的に年下で格下なわけで、そんなMちゃんの言うことをAくんが「はいはい」と聞いているのに衝撃を受けたのだった。

 しかも、Aくんはドッチボール最強の人間。つまり学童内で強い発言権を持つ。ドッチボールが強くて、みんなから一目置かれていて、立場としてはガキ大将的なポジションなのに、別に特段ドッチボールが強いわけでもないMちゃんのワガママを聞いていた。ちなみに、私はMちゃんと関わったことはその時点でほとんど無かったが、Mちゃんは誰よりも体が柔らかかったのでちょっと尊敬していた。

 AくんはMちゃんの言うことを無視したり、なんなら力ずくで跳ね除けたりすることも可能だったと思うが、AくんはMちゃんの言うことを、ワガママでも暴言でも割となんでも聞き入れていた。Aくんに優しいイメージは一切なかったし、どっちかといえば荒っぽい人だったような気がするが、何故かMちゃんに対しては強く出ない。仕方なさそうな感じでMちゃんに着いていっていた。

 私はあの二人の感じ、めっちゃいいな……と思ったように思う。今でもあの感じ良かったな、と思っている。

 

•相手の気持ちになって考えよう

 どういう経緯だったか忘れたけど、昔、知り合いと喧嘩して「相手の気持ちになって考えようって、幼稚園で習わなかった?」という旨の発言をした記憶がある。今思うと口喧嘩のテンプレートすぎて面白い。相手を過度に格下扱いしようとするその姿勢、怒りに任せすぎ。

 一旦それは置いておいて。私がそういう発言をした後、相手はどう返したかと言うと「相手の気持ちになるなんて、そもそも無理な話だから」と一蹴されたのだった。続けて「だって相手の立場になるって言っても、結局は自分の考えを押し付けてるだけじゃん。『相手の立場になって考える』ごときで相手の気持ちなんて分かるわけないよ」と完全に論破された。確かにその通りだと思った。相手の立場になって考えるというのは、相手の立場で自分が考えることだから。結局は自分の意見に他ならない。私は何も言い返せなかった。

 これより後の口論の記憶はない。言い返せなかったところからすると、口喧嘩には敗北したのだろう。敗北したから記憶を消したと思われる。

 話は変わるが、私は口喧嘩が弱い。反射で論理を組み立てられないからだ。論理に基づいた結論が出る前に、思ってたのと違うことを言ってしまう。怒りに任せて話しているうちに、論理がぐしゃぐしゃになって「思いついたこと全部言っちゃえ〜」という状態になる。だから「幼稚園で習わなかった?」という発言が飛び出すのだ。

 大声を出すのは得意なので、論理の破綻した大声悪口合戦ならまだ勝機があるが、流石に脈絡なく悪口を叫んだところで、互いの胸に嫌な感じのしこりが残るだけだ。あと私はプライドが高いのでそういう勝負はしたくない。しかも繊細なので、シンプルな的を射てない悪口にもしっかり傷つく。メンタルとプライドを削ってまで、五分五分の勝負に持ち込みたくない。

 そして、私はプライドが高く、繊細であるが故に、口喧嘩に負けた後一人で「ああ言っておけば勝てたな」という反省会をする。多分みんなしてると思う。けど、私はその二億倍している。寝る前に、急に過去の華麗に論破されたことを思い出して、今更腹が立ってしばらく相手を言いくるめる作戦を考えたりする。そしていちいち嫌だったことを思い出して、こんな文章を書いたりもする。私は執念深くもある。

 今、あの日の口喧嘩に戻れるとしたら、私がまず言うべきなのは、相手の立場に立って考えることを放棄してはいけないということだろう。どのみち、相手の気持ちなんて本当は分からない。だからといって相手の気持ちを考えることを放棄してはいけない。どうせ気持ちが分からないからって勝手に思いやりを捨てないでもらいたい。思いやれよ、もっと。もっとも、口喧嘩してる時点で相手を思いやる心は欠けていたと言わざるをえないが。